姫路・西はりま 地場産業紹介

にかわ・ゼラチン

皮革の歴史

革のはじまり

革のはじまり

人類と皮革の歴史は古く、およそ200万年前の旧石器時代にまで遡ります。狩猟によって生活を営んできた人類は、寒さや衝撃から身を守るために毛皮や革を活用してきました。旧石器時代の遺跡からは、皮革の加工に使用した道具が発見されており、それを使って除毛などを行っていたと考えられています。人類は、歴史の中で「皮」を「革」にする「鞣し技術」や、革を製品にする「加工技術」を創意工夫し、伝承してきました。

動物の皮は、そのままにしていると硬くなったり腐敗したりするため、変化しやすい「皮」を長持ちする「革」に生まれ変わらせる技術が、人類の歴史とともに発達してきました。最初は乾燥させるだけでしたが、柔らかくするために、揉む・叩くといった作業を行うようになりました。これをさらに柔らかく仕上げるために開発されたのが、魚や動物の油脂を塗る「油鞣し」というもので、これが最古の鞣し技術と考えられています。また、囲炉裏の近くにかけておくと腐敗しないことから始まった「燻煙鞣し」や、倒木のそばで死んだ獣の皮や染色のために草木の汁に漬けた皮が腐らないことから発見された「植物タンニン鞣し」など、様々な鞣し技術が開発されてきました。

そうして加工された革は、衣服として利用されていたばかりでなく、寝具、武具、鞍などの様々な用途に利用されていたと考えられます。また、メソポタミアや古代エジプトでは、革製の巻物を書き物の道具に用いていたと伝えられており、中世までは羊や山羊の皮を乾燥させた羊皮紙が、重要な記録用紙として使用されてきました。羊皮紙は非常に耐久性が高いため、紀元100年以前の巻物など、数多くの資料が残されています。

19世紀後半になると、薬品を使用した鞣し技術が開発されました。金属を原料とした「クロム鞣し」は、作業時間が短く経済性に優れていることから、革の量産を可能としました。クロム鞣しで鞣した革は、柔軟性・保存性・耐熱性・染色性が良いため、靴やバッグ類、衣料など、広く用いられています。

世界の革文化

欧州 イタリア 革文化が深く根付いており、ルネッサンス期には金唐革といわれる壁装飾用の革が作られるなど、インテリアにも革が用いられてきた歴史があります。また、1000年以上も続くバケッタという製法(植物タンニン鞣しの一種)を守り続けています。
イギリス イギリスの革の歴史は、乗馬が始まりといわれています。丈夫な馬具を作るために蝋を繊維にしみ込ませ、耐久性の高いブライドルレザーが開発されました。こうした背景から丈夫な革を加工する技術に秀でており、世界的に有名な紳士靴のブランドも数多く存在しています。
フランス 染色後に顔料を塗るフランス独自の製法により、発色が良いことが特徴です。世界的に有名なファッションブランドが多いため、エレガントな革が好まれる傾向にあり、上質な革が各地から集まります。
アフリカ アフリカは、ワニ、ダチョウ、象、ヘビ、トカゲなど、数多くのエキゾチックレザー(家畜以外の動物全般の総称)の革の産地となっています。サイズが大きい動物が多いことが特徴です。
北米 食用として牛肉を大量に消費するため、牛革の鞣し技術も必然的に発達しました。また、ネイティブアメリカンの美しい工芸品も重要な革文化として残っています。
中南米 多種多様な生物が生息する中南米は、ワニやヘビ、トカゲの皮の産地として知られています。また、山羊などの家畜からも毛皮や革製品を作る文化が根付いています。
アジア 日本 古くは鹿革が中心で、武具や馬具のほか、衣類や寝具などの日用品としても幅広く愛用されてきました。江戸時代頃から牛や馬の革も用いられるようになり、明治時代から豚革が使われるようになりました。同じ日本の中でも、気候や文化、歴史的背景によって革文化の特徴は異なっています。
東アジア 羊皮と豚皮の薄物革の生産量は、ともに世界第一位といわれています。2002年には中国でも本革エコマーク基準が制定され、環境に配慮した取り組みも始まっています。
東南アジア ワニの養殖が大規模に行われている東南アジアでは、食用としてだけではなく、ワニ革も革製品に活用されています。中でもイリエワニは模様の美しさに定評があり、ワニ革の中で最上級品とされています。
南アジア インドやパキスタン、バングラデシュは鞣し産業の集積地で、特に熱帯気候ゆえの薄い革が作られているのが特徴です。
オセアニア サメ、ダチョウなどの高級皮革の産地として知られています。また、オーストラリアでしか生産されていないカンガルー革は、丈夫さとしなやかさを兼ね備え、また非常に軽いため、スポーツシューズ等によく用いられています。

参考:一般社団法人日本皮革産業連合会HP

兵庫県の皮革産業

播磨地域の革鞣し

播磨地方で古くから製革が行われていたことは、平安時代末期の法令集「延喜式」の中で確認することができます。中世以降、その生産の中心となる姫路地域では、多くの白い鞣革が産出され、「播磨の革工能く熟皮(なめしがわ)を物し、その品争いて当時の武士に求められる」と言われるほど全国的な人気を博し、その強靭な耐久性は高い評価を得ていました。

我が国の皮革のふるさととして知られる姫路で皮鞣しが盛んとなった理由としては、次のような好条件が揃っていたことによると考えられます。

  1. 皮鞣しをするのにふさわしい市川という穏やかな流水と、広い河原があった。
  2. 西日本では多くの牛が飼育されていたため、原料である牛皮の入手が容易であった。
  3. 瀬戸内海気候の特長として、比較的温暖で雨も少ない土地であるため、天日に干す革晒しに好都合であった。
  4. 皮の保存や処理に必要な塩の入手が容易であった。
  5. 大阪や京都など、政治・経済・消費の中心地と近い関係にあった。

播磨地域の皮革産業の発展

市川流域

播磨地域における製革業の歴史は極めて古く、弥生時代の後期に大陸からの渡来人が鞣製技術を伝え、その基礎を築いたとみられています。その後、江戸時代中期には、全国的な商品経済の発達と藩の重商政策のもとに大きく発展を遂げました。

当時、既に地域的な分業が行われ、鞣製部門は市川流域をはじめ西の揖保川流域に沿った地域に発達し、加工部門は姫路城下町の中二階町から東二階町にかけて展開していました。

明治期になって近代的鞣製法が採り入れられ、大正期には軍需専門化が行われて急速に企業化が進みましたが、戦後は強制的な軍需専門化は分裂し、小規模民需産業として再出発しました。業界は、昭和26~38年の間に著しい成長を遂げ、昭和40年代の後半に入り、経営の合理化や設備の近代化を進展させました。

近年では、原皮価格の高騰や、欧州・中国に加えて後発開発途上国からの大量輸入によって厳しい状況にありますが、現在でも全国有数の生産量を誇っています。また、世界最大の皮革見本市であるAPLFにおいて当地域の革が世界の頂点を極めるなど、国内外で数々の受賞歴を有するとともに、その品質は非常に高く評価されています。

姫路の皮革産業の起源

姫路における皮革産業の始まりは、前述のような大陸からの渡来人によるという朝鮮伝来説のほか、
聖翁授説や出雲国由来伝説などの言い伝えがあります。

1.朝鮮伝来説

地元では最もよく知られているもので、神功皇后の三韓征伐の際の捕虜に熟皮術に長けた者があり、但馬の円山川で製革を試みた後、南下して市川で成功し、その技術を村人に伝えたという説。

2.聖翁授説

その昔、松ヶ瀬(姫路市の高木地域の古称)の椋の巨木の下に住む博識の老人に製革を学んだとされる説。この老人を聖翁と尊称し、それが地区で祀る聖神社の祭神といわれている。

3.出雲国由来伝説

製革の起源を神功皇后時代にあると認める一方で、元禄時代に出雲国古志村の革商が大阪木津川で試みたが成功せず、市川で良品を得て、越革として世に出して名声をなしたという説。

このように様々な言い伝えがありますが、実際にはこれらの伝説が混合したような形で語り伝えられています。

兵庫県の皮革産業の歴史についての詳細な情報は、下記URLにてご覧ください。
兵庫県皮革産業協同組合連合会ウェブサイト

鞣しについて

「皮」から「革」へ

「皮革」の「皮」と「革」の表記は間違えられることが多く、前者は動物の皮膚を、後者はその皮膚を原料にした素材を指します。動物を食肉加工する際の副産物として生まれる「皮」は、鞣しという工程を経て「革」となります。鞣しとは、動物の皮を腐敗しないように加工する作業のことです。

革を柔らかくすると書いて「鞣(なめし)」。これは、「皮」を「革」にするために最も重要な作業です。具体的には、動物の皮から不要なタンパク質や脂肪などを取り除き、腐らないように化学的に処理することです。

現在の皮革産業では、クロム鞣しとタンニン鞣しという鞣し方法が主流です。クロム鞣しとは塩基性硫酸クロムを使う方法で、数日程度の短期間で耐熱性に優れ伸縮性に富んだ革に仕上がります。一方、タンニン鞣しは植物の渋を使っており、数週間から数ヶ月の期間を経て、ハードな手触りとナチュラルな風合いが特長の革となります。

動物の皮→鞣し(加工技術)→(素材の「革」)

鞣しの種類

鞣すために使用する鞣し剤には革の用途に合わせて様々な種類がありますが、植物タンニン鞣しとクロム鞣し、混合鞣しが主流となっています。

タンニン鞣し

樹皮や果実から抽出したタンニン(渋)を使って鞣す方法。タンニンを含む植物は多数ありますが、現在使われているのは、南アフリカ産のミモザから抽出したワットルエキス、南米のケブラチヨから抽出したケブラチョエキス、欧州のチェスナットから抽出したチェスナットエキスで、これを単独で使用したり、混合して使用したりして鞣しを行っています。最近では化学的に合成されたタンニンもあるため、植物由来のタンニンを使う場合は、「植物タンニン」と区別する場合もあります。自然な仕上がりに加えて硬くて丈夫で、長く使ううちに肌になじみ、色の深みが増すなどの特徴があるため、ケースや鞄、靴底など立体化する革製品に適しています。また、染料の吸収性がよいという性質があり、じっくり鞣すため、数週間から数ヶ月の工程になります。

クロム鞣し

金属鞣しの一つで、塩基性硫酸クロムの鞣し剤を使用します。この方法が最も多く用いられています。1~5日の短期間で鞣すことができ、他の鞣しとの組み合わせも可能で、様々なタイプの革が生み出せます。また、耐熱性や染色性、弾力性に優れているため、靴の甲革や袋物、服飾用など、幅広い製品に用いられます。植物タンニン革に比べて鞣し剤の結合量が少ないため、軽さと吸収性の大きさが特長です。鞣し終わった状態では「ウエット・ブルー」と呼ばれる青白い色となるため、後で染色して利用されることが多くなります。

混合鞣し

多種多様な革製品のために研究された技術による鞣し方法です。タンニン鞣しとクロム鞣しの特長を組み合わせることで、それぞれの欠点を補う効果があります。セーム革の製造などに使用されます。

その他

ホルマリン鞣し、油鞣し、アルミニウム鞣し等があります。

革の製造工程

革ができるまで

1原皮
牛・馬・羊・ヤギ皮などが、アメリカ、オーストラリア、ヨーロッパ、東南アジアなどから輸入されています。国産原皮としては、牛・豚皮などがあります。
2原皮倉庫
日本に到着後、いろいろな手続きをして倉庫へ持ち込まれ、その後各工場へ運ばれます。
3原皮水洗い
原皮に付着している血液や汚物などを取り除きます。汚れた水は、処理をしてきれいな水にしてから外へ流します。
4脱毛石灰漬
石灰に浸漬し、アルカリによって皮を膨張させ、毛を毛根から抜き取ります。毛を抜き取った面(銀面)が、皮の表面になります。
5分割
(スプリッティング)
分割機(スプリッティングマシン)を用い、用途(靴用・カバン用・衣服用など)に応じて任意の厚みに分割します。銀面(表面)側と床皮(裏面)側の二層に分割され、床皮は床革のほか、食用・工業用・医療用コラーゲン製品として多方面に利用されます。
※ 鞣し後に分割する場合もあります。
6鞣し
鞣し剤を皮に浸透させてコラーゲン繊維と結合させることで、耐熱性や耐久性を持たせます。クロム鞣しやタンニン鞣しなどがあり、この工程を経ることで、皮から革に変化します。
7背割り
牛・馬などの大きな革は、作業がしやすいように、1頭分の革を背筋に沿って半分に分けます。
8水絞り
水絞り機械によって、余分な水分を絞り出すと同時に革を伸ばします。
9等級選別
革の表面(銀面)の欠点を見分けるなどの品質検査を行い、各等級に分けます。
10シェービング (裏削り)
シェービングマシンで革の肉面を削り、用途に応じた最終的な厚みに調節します。
11再鞣し
合成鞣し剤や天然の植物タンニン剤を使って、靴や衣料、袋物などの各種用途に応じた特性の革にしていきます。
12加脂・染色
油脂で革に柔軟性を与えてやわらかさなどを調整しながら、染料で希望の色に染めます。
13セッター (伸ばし)
セッティングマシンで、染色した革の水分を取り除くと同時に革を伸ばします。
14ガラス張り乾燥・真空乾燥
革の中の染料や加脂剤を固着させるため、金属板などに革を伸ばしながら張って乾燥させます。革の感触に直接影響する重要な工程になります。
15バイブレーション (革もみ)
バイブレーションステーキングマシンや空打ちによって、乾燥させた革をもみほぐし、柔軟性や弾力性を与えます。
16ネット張り乾燥
革を網板の上にトグル張りし、平らな状態にして乾燥させ、仕上げをしやすいように姿勢(カタチ)を整えます。
17バフ (ペーパーがけ)
ヌバックにする場合など、革の種類によっては、バフィングマシンで表面をペーパーで擦り取って滑らかにします。
18塗装作業 (機械塗り)
色付けとともに耐久性を出すため、自動スプレー装置やカーテンコータなどで着色します。
19塗装作業 (手塗り)
手塗りで着色していきます。
20塗装作業 (スプレー)
目的の色に合わせるため、スプレーで最終的な調整を行います。
21型押し・アイロン
革を伸ばし、艶を出す目的でアイロンをかけ、美しさを強調します。また、型を押すことで、革にいろいろな模様をつけます。
22物性試験・外観検査
革の色や強さ、柔らかさなどの品質を検査します。
23計量
計量機にかけて、革面積を計量します。単位としては、国内向けのデシ(DS)と、海外向けのスクエア・フィート(SF)の2種類があります。 ※ 1DS=10cm×10cm、1SF≒9.3DS
24梱包・発送
革が汚れないように梱包・荷造りし、発送を行います。
25製品に
靴・かばん・ベルト・衣服・手袋・グローブなどの製品となります。

革の種類

様々な革の種類

革の種類は、原料である動物の種類・性別・大きさ・部位などによって分けられる「原皮による分類」、革の製造工程における鞣しの違いによる「鞣しによる分類」、革の表面加工などの違いによる「革のタイプによる分類」、仕上げ処理の違いによる「仕上げ方法による分類」と、大きく4つに分けることができます。また、用途によってもいくつかの分類に分けることができます。

原皮による分類

牛革 あらゆる皮革の中で、最も用途が幅広いのは牛革です。我が国でも牛革による多種多様な皮革製品が作られていますが、原皮そのものは85%以上を海外からの輸入に頼っています。大判で厚く、繊維組織が比較的均一で充実しており、強度及び耐久性があります。産地、性別、年齢によって、キメの細かさや強度、柔らかさなど、品質にかなりの差があり、次のように分けられます。
カーフ 生後6ヶ月以内の子牛の革で、滑らかで柔らかく、きめ細かいのが特徴です。牛革の高級品で、なかでも生後3ヶ月以内のベビーカーフは最高級品とされています。
キップ 生後6ヶ月から1年余りまでの牛の革で、カーフに比べて柔らかさは劣りますが、厚みがあって強度が高いのが特徴です。
ステア 生後3~6ヶ月以内に去勢されたオスで、生後2年以上を経た牛の革です。表面(銀面)のキメが細かく柔らかいですが、メスに比べて厚みとハリがあります。
カウ 生後2年以上のメスの成牛の革で、キップより厚みと強度があります。ステアと比べると、柔らかくキメ細かいですが、強度は劣ります。
ブル 生後3年以上のオスの成牛の革で、厚手で繊維組織の粗さが目立ちます。
地生 国内産の牛は生革のままで取り引きされたところから、地生(ヂナマ)と呼ばれます。大きさは北米産とほぼ同じですが、国内のものよりも銀面に傷が少なくきれいです。
馬革 繊維組織が粗いため、牛に比べると強度は落ちますが、柔軟性に優れています。また、臀部を使ったコードバンは、美しい輝きと強さ、しなやかさがあることから革のダイヤモンドと称され、靴やベルト、時計バンドなどに使用されます。その他の部位は、裏革等が主な用途となります。
鹿革 非常に柔軟で手触りも良く、何よりも耐水性に優れていることが特徴です。鹿の皮を動植物油で鞣した革は柔らかくしなやかで、セーム革と呼ばれています。ガラス拭き、高級手袋、帽子、衣服などが主な用途です。
豚革 牛革に次いで利用範囲が広く、かばん、袋物、ベルトをはじめ、靴の甲裏革や敷革に用いられます。表面に独特な毛穴の模様があり、革としては薄くて軽く、摩擦にも強く通気性にも優れています。海外で珍重されており、最近では輸出も多くなっています。
山羊皮 普通の山羊革はゴート、子山羊の革はキッドと呼ばれています。薄いながらも強度があり、繊維がとても緻密なのが特徴です。衣服や手袋などに使用され、特にキッドは高級靴や高級婦人手袋に多く用いられます。
ゴート 羊革よりも充実した繊維組織を持ち、強くてやや硬い革です。表面に特有の凹凸があり、摩耗にも強いのが特徴です。
キッド ゴートよりもさらに薄くて軽く、染色の特色性にも優れています。
羊革 羊は、品種が多く性状も多様です。キメが細かく薄くて柔らかいですが、相対的に見ると、革の中では強度に欠けます。成羊はシープスキン、生後1年以内の子羊はラムスキンと呼びます。主に衣類や手袋に用いられるほか、書籍の装丁にも使用されます。なかでもインド産のものは、その優秀性が世界的に認められています。
オーストリッチ ダチョウの革のことで、羽根を抜いたあとが丸く突起し、表面に特有の模様があるため珍重されています。強靭で重厚さもあり、柔軟性にも富んでいます。また、数も少ないため、高級素材として袋物やベルト、靴などに使用されています。
カンガルー 生息地がオーストラリアに限られ、年間捕獲量も制限されているため、高級素材として扱われています。カーフよりも評価が高く、柔らかい上に強度も兼ね備えています。伸びて変形しないため、高級な靴やスパイクシューズに使用されます。
爬虫類 ワニ、ヘビ、トカゲの3種が主なもので、いずれも革の模様から珍重されています。高級袋物、ベルト、時計バンド、靴などが主な用途です。
エイ 細かな粒状の表面が独特の光沢を放つアカエイの革は、泳ぐ宝石と呼ばれるほど珍重されています。

鞣し方法による分類

革の製造工程は、準備工程、鞣し工程、仕上げ工程に分けられます。鞣し工程は、鞣し剤でコラーゲン繊維・組織を固定・安定化させ、革としての基本的性質を付与する作業といえます。その工程の違いによって革を分類することができますが、代表的なものにクロム鞣し革やタンニン鞣し革があり、特殊なものとして油鞣し革などがあります。

クロム鞣し革 クロム鞣し革の特徴は、柔軟性、弾力性、拡張性、耐熱性、染色性に優れており、比較的軽いですが、可塑性がいくらか劣ります。クロム鞣し剤単独ではなく、植物タンニンや合成タンニンなど、クロム以外の無機鞣し剤等との複合鞣しによる革が多くなっています。靴甲革、かばん、袋物革、衣類革、学具用革などに使用されます。
タンニン鞣し革 タンニンの特徴は、茶褐色で光によって暗色化しやすく、低pHで淡色に、高pHで濃色となります。革としては、堅牢で摩耗に強く、また、伸びが小さくて可塑性が高く成形が良いという特性があります。一方で、比重は比較的大きく、耐熱性に劣るという面もあります。底革、ヌメ革、多脂革等として使用されます。
油鞣し革 油鞣し革の特徴は、非常に柔軟で吸水性が良く、適度の親油性を持っている点です。アルデヒドとの複合鞣しで行われることが多く、代表的なものにセーム革があります。
その他 その他にも多様な革がありますが、それらの性質は鞣し剤や鞣し方法によってそれぞれ異なります。ホルマリン鞣し革、ジルコニウム鞣し革、樹脂鞣し革、混合鞣し革などがあります。

革のタイプによる分類

銀付革 動物本来の銀面模様をそのまま生かして仕上げた革で、代表的なものに、ボックスカーフ、アニリン仕上げ革等があります。カゼイン及びラッカー仕上げされるものが多く、美しい銀面と優れた耐久力、快適な使用感を備えた銀付革は、紳士靴、婦人靴、袋物用革、ベルト用革、衣料用革素材として人気です。
エナメル革 銀面にウレタンなどの樹脂塗料を塗って光沢を出した革ですが、本来はボイルアマニ油やワニスの塗布と乾燥を繰り返して光沢のある強い被膜を作って仕上げていました。パテントレザーとも呼ばれ、カーフ、キップ、馬革などが用いられることが比較的多くなっています。礼装用紳士靴、婦人靴の甲革、ハンドバッグなどに用いられます。
スエード 革の裏面をサンドペーパーで毛羽立てて(バフ)ベルベット状に起毛させて仕上げた革で、主に子牛や山羊、羊革から作られます。柔らかなものほど良く、シルキースエードは最も上質とされています。靴甲革、ハンドバッグ、衣料などに使われます。
ベロア スエード同様に裏面をバフしたものですが、成牛革のように繊維組織が粗いものを使用しているため、起毛が粗く毛足がやや長いものをベロアと呼びます。
バックスキン 鹿革の銀面を除去して毛羽立てた革で、極めて柔軟であり、スエードと同様の用途で用いられるため、スエードと混同されることもあります。
ヌバック スエードとは違って革の銀面をバフして仕上げたものです。スエードと比較すると毛足が非常に短く、ビロード状をしています。高級品は子牛皮を原料としますが、成牛皮やその他の動物皮からも作られます。靴甲革、袋物、衣料などに使用されます。
床革 成牛皮のように厚い皮を、2層か3層に分割して得られる銀面を持たない床皮を原料とした革で、作業用手袋革、靴用革等に使われます。
ヌメ革 成牛や豚の皮などを薄いタンニン液で鞣し、染色をする前の革で、ベージュまたは薄茶色をしています。主に、袋物、ベルト、革工芸に用いられます。
型押し革 プレスで加熱・加圧して、革の銀面に様々な柄を押したものです。天然のシワとは異なり、自由に柄の型押しをすることができます。
ガラス張り 主に成牛皮を使用し、クロム鞣し後、ガラス板またはホーロー板に張り付けて乾燥させ、銀面をサンドペーパーで削り、樹脂を吹き付けて表面を平滑にしたものです。堅牢で手入れが簡単なため、タウンシューズ、学生靴、かばん等の袋物に使用されます。
オイルレザー 蝋やオイルなどで撥水性や堅牢性を加えた強化レザーで、靴やかばんなどに使用されます。
もみ革 銀面を手や機械で揉むことによってシボをつけた革のことで、揉む方向によって「水シボ」、「角シボ」、「角揉み革」、「八方揉み革」などと呼ばれています。
シュリンク 「縮む」という英語の意味の通り、鞣しの工程で、熱や薬品によって革の銀面を収縮させてシボを出した革です。シュリンクすることで柔らかくなり、シボによって傷も目立ちにくくなります。

仕上げ方法による分類

素上げ調仕上げ ほとんど仕上げ剤を使用せず、フェルトバフなどで艶を出して仕上げます。
アニリン調仕上げ 銀面のパターンが見透かせるような透明感のある仕上げをいい、少し顔料を配合したセミアニリン仕上げ革も含まれます。
顔料仕上げ 顔料などを使用して仕上げられた革のことです。
グレージング仕上げ メノウやガラス玉などのローラーによって銀面を重圧し、革に光沢を出します。
アンチック仕上げ 斑模様などをつけた仕上げ革で、この種に類する革としては、ツートン仕上げやアドバンチックなどがあります。
エナメル仕上げ パテント仕上げともいわれ、ウレタン樹脂コートで仕上げられた革のことです。
メタリック仕上げ メタリック調に仕上げられた革のことです。

用途による分類

革製品は、その用途によって、履物類、衣類、服飾類、旅行用具類、工業用部品類、家具類、馬具類、楽器類、剣道用具類、手芸用などに分類されます。しかし、現実には製品の多様化に対応して様々な革が製造されており、用途別に全ての革を分類することはできませんが、代表的なものとして下記のような分類があります。

靴用革
(履物類)
紳士靴、婦人靴、子供靴、スポーツシューズ、作業(安全)靴などに使われる革を総称して、靴用革と呼びます。使われる部分によって、以下のように分けられます。
甲革 靴甲部の表革で、成牛・中小牛・山羊・羊などの皮を、クロム鞣しまたはクロムとタンニンの複合鞣しをしたものが使われます。
裏革 甲部を裏側から補強する革で、羊・山羊・馬・豚・牛などの皮を、クロムやタンニンで鞣した銀付革や床革が使用されます。
中底革 靴の内側で足裏に接する底部の革で、タンニン革が最適とされていますが、レザーボード、ファイバーボードなども用いられます。
底革 靴底の接地する部分の革で、成牛革をタンニンで鞣した厚手の革です。
衣料用革
(服飾類)
高級品には柔らかくて軽い山羊・羊・中小牛などが、また実用品には大きくて丈夫な成牛のクロム鞣し革が使用されています。衣料に使用される革の大半は銀付革で、次いでスエード革、プリント革、その他となっていますが、最近の傾向は「より軽く、より柔らかく、より薄い」ものであり、色調や風合いが多様化してきています。
バッグ・かばん用革
(旅行用具類)
バッグやかばんに使用される革の量は、我が国では靴に次いで多くなっています。軽くてソフトな感触の製品にはクロム鞣しされた銀付革やボックスカーフが、ハードなものにはタンニン鞣し革やヌメ革などが用いられます。
家具用革
(屋内や車のインテリアで使用する革)
大判でソフトな成牛革が多く、長期間の使用に耐える強度、耐摩耗性、染色堅牢度が要求されるため、合成樹脂塗料で厚い仕上げが施されているものが多くなっています。

姫革細工等について

播州姫路の革細工

姫路地域では、古くより白く鞣された特徴的な革が生産されてきましたが、戦国時代には多様な色彩で染色され、甲冑や馬具の装飾に使用されていました。

その特徴的な装飾技法の一つとして、革の表面に様々な絵柄を表す際に、立体的な型出しをする方法が挙げられます。型には主に木版型が用いられ、文様を彫り下げたものの上に布海苔か蒟蒻玉を溶かした液で湿らせた革を置き、踵で踏み込んで革に模様を浮き上がらせます。現在では、こうした伝統的な技法は行われていませんが、一部ではプレス機械を用いた木版型による型出しが行われています。

一方で、金属型による型出しも大正頃から行われていましたが、型の製作が高価なため、当時は一部に限られていました。昭和30年代半ば頃からは金属型が主流になり、今日まで続けられています。

また、革に文様を出す手法として、焼きごてを使用して線または面を陰刻していく方法もあります。革の上に図案紙を置いて焼きごてでなぞっていくもので、量産品以外の文庫などの箱物に多く用いられます。

こうして型出しした上から漆で金箔を置いたり、彩色をほどこしたりして美しく仕上げていきます。

現在の姫革細工

姫革細工

現在でも漆刷毛に独自の技術を加えたり、文様の型の種類を増やしたりすることで新たな作品づくりに取り組んでいますが、基本的な技法は全て手作業による伝統的製法を継承しています。18世紀頃からは羽織・足袋・財布などの日用品が作られるようになり、現在ではペンケース・ハンドバッグ・ポーチ・カードケース・ティッシュケース等、用途も多様化するとともに、兵庫県の伝統的工芸品として広く愛用されています。

姫路の白い鞣革

姫路の白い鞣革

歴史的にみて、我が国に伝わる最も代表的な皮鞣方法は、甲州印伝に見られる脳漿を用いた鞣革(鹿革)と、姫路の白い鞣革(牛革)に集約されます。

姫路の白い鞣革は植物油鞣の一種で、古くは原料の皮を川水に漬け、毛根部に発生するバクテリアの酵素の力で脱毛し、塩と菜種油を使って揉みあげ、天日に晒す方法で鞣されていました。その結果、独特の薄乳白色の革に仕上げられていきます。今日まで伝えられているという意味において、世界的にみても極めて貴重な存在であるということができます。

革の手入れ方法

革製品の手入れ方法

革は、使うほどに味わいが出てくる素材ですが、天然のタンパク質からできているため、扱い方を間違ったり手入れを怠ったりすると、極端に寿命が短くなってしまいます。ちょっとした手入れや心配りが、長持ちのポイントになります。

衣類

銀付革 汚れ 軽い汚れは、乾いた布で拭き取るか、ブラッシングをして落とします。また、部分的な汚れは、指定のレザークリーナーを布につけて軽く拭き取ります。ただし、アニリン仕上げの革の場合は、クリーナーがしみ込んでシミになることがあるため、目立たない部分で試すなど、注意が必要です。革用消しゴムでも汚れを落とすことができますが、同様に注意してください。ベンジン、シンナー、中性洗剤などは、色落ちしたり革のツヤがなくなったりするため、使用しないようにしましょう。
濡れた場合 水滴を払い落とした後、タオルで叩くようにして水分を吸い取り、風通しの良いところで陰干しします。濡れた革は熱に弱いので、ストーブの使用などは避けてください。乾燥後に軽く揉んでゴワゴワしている場合は、指定の革用乳化クリームを塗って油分を補ってください。
起毛革 (スエード) 汚れ 粉塵等の汚れには、こまめなブラッシングで対応します。ブラシで取りにくい汚れなどは、天然ゴム系のブラシを使用すると良いでしょう。液体の汚れは、内部に浸透しないよう、速やかにティッシュペーパーなどで叩くようにして吸い取ってください。
濡れた場合 銀付革と同様にします。
カビの手入れ 銀付革は乾拭き、起毛革にはブラッシングをします。縫い目などの細かい部分には、歯ブラシが便利です。カビを除去したら、ハンガーにかけて陰干しにて乾燥させてください。十分に除湿することで、カビの発生を抑えられます。
保管 予め陰干しして水分を減らし、カビが発生しにくい状態にします。ハンガーで保管する場合は、肩幅にあった厚みのあるハンガーを使用し、型崩れしないように気を付けてください。ビニールカバーは、革の呼吸を妨げてカビの発生原因になりますので、使用しないでください。塩化カルシウム系の除湿剤を用いることがありますが、放置すると潮解して液状になり、これが革に付着すると収縮して硬化しますので、シリカゲル系の除湿剤を使用するようにしましょう。

手袋

銀付革の手入れ 泥やホコリの汚れは、乾いた布で拭くか、ブラシをかけて落とします。付着がひどい時は、濡れた布で拭いてから必ず陰干しにしてください。落ちにくい場合は、指定のクリーナーを柔らかい布につけて拭きます。部分的な軽い汚れは、良質の革用消しゴムで軽く擦り取ります。雨や雪で濡れた場合は、乾いたタオルで叩くようにして水分を吸い取り、風通しの良い場所で陰干しにします。
スエードの手入れ 泥やホコリの汚れは、硬めのナイロンブラシを強めにかけると、スエードの毛切れとともに取れます。毛が倒れてテカテカと光ったり、ソフトな光沢が失われてきたりした場合は、天然ゴム系の特殊なブラシで擦るようにしてください。
洗濯の方法
(ウォッシャブルのみ)
革手袋の中には、ウォッシャブル革を使用していて家庭で水洗いできるものもあります。洗剤にはウールや絹用の中性洗剤を使用し、ぬるま湯ですすいだ後はタオルで包んで水分を取り、陰干ししてください。生乾きの状態になったら、手にはめて軽く揉むようにして形を整えます。洗濯液に漬けたまま長時間放置すると、革の劣化が進んで弱くなることがありますので、注意してください。
カビの手入れ 早期発見が重要になります。銀付革は乾拭き、スエードはブラッシングして落とします。縫い目などの細かいところは、歯ブラシ等を使って入念に取り除くようにしてください。手に負えないと感じた時は、クリーニング店に相談しましょう。
保管 革手袋には上質の革が使用されており、無理に引っ張ると型が崩れたり破れたりしますので、丁寧に扱うことが肝要です。高温多湿の場所を避け、ホコリや湿気を処理してから保管してください。

かばん

水に濡れた場合 雨などで濡れてしまった場合は、乾いたタオルで叩くようにして水気を取り除き、風通しの良い場所で陰干しします。濡れた革は熱に弱いので、ストーブなどの高温のものには近づけないようにしてください。また、乾燥すると変形することが多いので、形を整えてから乾燥させるようにしましょう。一度中まで濡れてしまうと、革中の油分が不均一になって部分的に硬化することがあります。その場合は、指定のクリームを柔らかい布につけて、輪を描くように軽く擦りこみます。ただし、クリームでシミになることもありますので、必ず指定のクリームを使い、また、見えにくい部分で試してから使用するなどしてください。
汚れ落とし 普段は柔らかい布で乾拭きしたり、ブラッシングしたりしてホコリを払う程度で十分です。手垢や汗などの汚れがひどい場合は、指定のクリーナーを布につけて軽く拭くようにしてください。この場合も、見えにくい部分で試してから使用するなどしてください。
保管 長く保管する時は、カビの栄養分になる汚れやホコリを、できるだけ除去することが肝要です。また、天気の良い日に陰干しして、水分を少なくしてから保存するのも大切です。ナフタリンなどの防虫剤は、直接触れると変色したり、接着部が剥がれたりすることがありますので、使用しない方が良いでしょう。

靴クリームの
種類と性質

靴クリームは、「汚れを落とす」「しなやかに保つ」「色合いを調整する」「ツヤを持たせる」「防水性を与える」などのために使用します。現在市販されている靴クリームの種類は、次の通りです。

  • 乳化性(ビンやチューブなどに入っており、ペースト状か液状)  
  • 油性(缶に入っており、半固形状)  
  • エアゾール(缶に入っており、霧状または泡沫状)

我が国では、ビンやチューブの乳化性クリームが最も一般的で、靴クリームの75%以上を占めており、液体クリーム、油性缶入りクリームがこれに続きます。また、最近では、エアゾールが機能面での特徴を生かした防水材、汚れ取り兼用ツヤ出し剤として大きく伸びています。

乳化性クリーム 乳化性クリームは、ワックス・油・水の3成分を乳化剤で混合乳化したものです。ツヤ、柔軟保革性のほか、油溶性染料、水溶性染料、顔料レーキなどが併用できるため着色性に優れ、さらに自由に調色が可能なため、年々変化する流行色にも対応でき、商品価値に優れているのが特徴です。
油性クリーム 乳化性クリームと大きく異なる点は、ワックスと油の2成分から成り、水が入っていないことです。そのため、防水性の点で優れています。油溶性染料または顔料を使って調色しますが、色数が少なく、スタンダードな色調のものが主体となります。
エアゾールタイプ エアゾールの機能面を利用して開発され、霧状と泡沫状の2種類があります。一般的に、前者には油性タイプ、後者には乳化性タイプが多くなっています。ツヤ出しのほか、防水剤、消臭剤などを配合したものもあり、また使用対象をスエードに限ったものもあります。
クリーナー 靴の汚れを落とすにはクリーナーが必要ですが、革の種類によって使い分けることが大変重要です。チューブ入り・乳液状・エアゾール・固形(ラバー)などや、油性・乳化性(中性・アルカリ性)などがありますが、特にアニリン調の革や起毛革(スエード等)には、必ず専用のクリーナーを使う必要があります。その他、革の種類によって手入れ方法などが異なるため、必ず事前に確認するようにしてください。
一般的な靴の手入れ 靴は、手入れ次第である程度美しく保つことができます。ただし、履いた後そのままにしておくと、型崩れやカビ、シミなどの原因となって早く劣化させることになりますので、保管する時の手入れも靴を長持ちさせるための重要な要素です。
新しいうちから
靴クリームを
新しいうちからその素材に合ったクリームを塗っておくと、革に油分の補給ができると同時に表面にワックスの薄い保護膜ができ、キズや汚れを防ぐ働きをします。それによって後の手入れが容易になり、靴を美しく保つことにつながります。
雨の日には 革は、水分を含むと繊維が硬くなり、色落ちやシミの原因になりやすいため、防水剤を使用しておくと安心です。濡れた場合は、シューズキーパーや新聞紙で型を整えてから風通しの良い日陰で乾燥させ、乳化性のクリームを十分に塗りこんでツヤと栄養分の補給をしましょう。また、普段からホコリや汚れをこまめに取り除くようにしたり、毎日同じものを履くのではなく、時々休養させたりするようにしましょう。
保管 保管する前に、必ず陰干しをして乾燥させてから、クリーナーとクリームで十分に手入れしてください。汚れはカビの原因になるため、注意が必要です。特に、ブーツのように梅雨期・夏期を通して長期に保管する場合は、時々風にあてて簡単に手入れすることで、カビの発生を防ぐことができます。

Q&A

皮革についてのQ&A

自然な感覚を強調した製品などでは、クリーナーで拭いたり防水スプレーをかけたりすると、色が濃くなったりシミになったりすることがあります。これは、なぜでしょうか?また、防止することはできますか?
手入れ剤は、形状(霧状・泡沫状・液状・ペースト状・半固形状)、用途(保革用・汚れ落とし用・防水撥水用など)、製品(衣料・靴など)、革(銀付革・起毛革など)などによって分類され、多くの種類が市販されています。手持ちの革にはどの手入れ剤が合うか分からない場合は、必ずお店または専門家に相談するようにしましょう。また、使用前に目立たないところで確認することも必要です。
革衣料をクリーニングに出すときの注意点は?

革衣料は容易に洗濯やクリーニングができないため、日頃の手入れが重要になります。しかし、それでも汚れがひどくなった場合には、クリーニングに出さざるを得ません。その場合、特に下記の点に注意してください。

  1. 皮革専門のクリーニング業者、あるいは専門業者に取次ぎできる店であることを確認してください。
  2. 店頭での受付時に、汚れ、変退色の程度、傷、破れ、ほつれなどをチェックしてください。できれば、袖や丈の寸法も測っておいてください。また、レザーに限りませんが、ボタンや装飾品など、附属品の確認も行うと良いでしょう。
  3. スーツなどペアの物は、片方が汚れていない場合でも、色合わせ用にお店に預けるようにしてください。コートのベルトなども参考になります。
  4. 動物の種類や革の表面加工などにより、クリーニング中の機械的な作用で、生体時の傷や血管跡など、その革の持つ特徴が顕在化してくる場合もあることを認識しておいてください。
  5. 汚れが除去されると、着用中の光による退色が顕在化することがあるので、認識しておいてください。
  6. クリーニングすると新品同様に仕上がるという期待をしますが、革に全く変化を与えずに汚れだけをとることは不可能です。ある程度の変色や縮み、風合いの変化などが生じることがあるのはやむを得ないとお考えください。なお、クリーニング店から戻った革衣料は、すぐに袋から出してください。石油の臭いなど異臭がする場合は、店に再処理を依頼するか、風通しの良い屋外で臭いがなくなるまで陰干ししましょう。その後、型崩れを防ぐため、肩幅にあった厚手のハンガーに掛けて、直接光があたらないところにゆったりと吊るして保管してください。
薄くて軽い革製品は、ポケット口が破れたり、スカートのスリットが裂けたり、ミシン切れが生じたりすることがありますが、これは避けられないのでしょうか?丈夫な革製品の見分け方、また補修方法があれば教えてください。
革の強度は、主にその断面の主要部分を占める網状層の厚さ、繊維の太さと絡み具合によって決まります。牛馬などの大きな動物は皮が厚く、羊や子牛は原料皮自体が薄くなります。さらに、それぞれの動物の部位によっても厚さが異なります。また、縫製の際の糸の太さや針目の数などの縫製条件も大変重要になってきます。素材が薄すぎたり、素材と縫製条件が合っていなかったりすると、革切れが生じる原因になります。革が破れてしまった場合は、補修は不可能だとお考えください。こういったことも頭に入れ、革衣料を購入する際には、ポケット口やスカートのスリットなど、着用によって力がかかる部位の縫い目をよく観察することが大切です。
革衣料専門のクリーニングは高価なため、シーズン前に家庭で簡単に手入れする方法はないでしょうか?
汚れは時間を置くほど取れにくくなり、カビの発生原因になるため、シーズン中のこまめな手入れとシーズン後の保管前の手入れが必要になります。汚れがひどい場合を除き、シーズン終了ごとにクリーニングに出す必要はありません。軽い汚れは、ブラッシングや消しゴムタイプのクリーナーで落とすようにしましょう。水溶性の汚れは、タオルなどを水に濡らして固く絞ってから拭くと良いですが、シミや色落ちが生じないことを、目立たない部分で確かめておきましょう。市販のクリーナーには、消しゴムタイプ以外にもペースト、乳液、スプレータイプなどがあります。また、水溶性の汚れを落とすものや油性の汚れに効果があるものなど、様々な種類があります。よく確かめてから、その汚れにあったものを使うようにしましょう。
スムースな革の手触りがカサカサしてきた時は、レザーウェア用のクリームで油分を補給しておきましょう。無色のものでもワックス分が多く毛穴に白く残るため、靴クリームの代用は避けてください。
手入れ後は、カビの原因となる湿気を取り除くため、よく陰干ししてから収納するようにしてください。また、シーズン前には防水スプレーを使用して、水や汚れから革を保護するようにしましょう。
革製品にカビが生じた場合、どうすればよいでしょうか?また、防カビ対策はありますか?

カビを抑えるためには、次の点が重要です。

  1. 乾燥状態にして水分を与えない。
  2. 低温にしてカビの生育を抑える。
  3. 汚れを除き、栄養源を与えない。
実際にカビが生えてしまった場合、少しであれば、水に濡らしてから固く絞った布などで擦って取れることがあります。拭いた後は陰干しにし、できるだけ使用することが最良の防カビ対策になります。また、シーズン終了後や長く使用しない場合は、できるだけ早く革から水分を除去するようにしましょう。年数回は、気温の低い晴れた日を選んで陰干しするのも効果的です。
革衣料やバッグを雨の日に使用したところ、風合いが損なわれ、革が硬くなり、型崩れしてしまいました。修復は可能でしょうか。
雨の日の使用はできるだけ避けるようにしましょう。革らしさを強調した革は、素上げや薄い塗装仕上げをしたものが多く、その表面は十分には塗装膜に覆われていません。そのため、水に弱くなります。濡れた革は水分によって膨らみますが、水分が蒸発して乾燥すると収縮が起こり、繊維間の摩擦が大きくなって硬化し、風合いも損なわれます。また、革は部位によって繊維構造に差があるため収縮度合いも異なり、その結果として型崩れが生じることになります。程度にもよりますが、風合いが損なわれたり型崩れしたりしたものの修復は、一般的にかなり困難だと考えましょう。
革中のホルマリンが問題になることがありますが、なぜでしょうか?
革繊維の防シワや防縮を目的として、尿素ホルムアルデヒド樹脂による処理をするがあります。この樹脂で処理した衣服は、ホルムアルデヒドを遊離しやすく、皮膚障害を起こすことがあります。ただし、衣服中のホルムアルデヒドは法律で規制されており、革製品の場合も同様の基準値が考えられています。通常のクロム革中のホルムアルデヒドが基準値を超えることはほとんどありませんが、製革工程で薬剤を使用した場合には、これを超えることもあります。少しでも不安に思ったら、すぐに専門家に相談するようにしましょう。
革製品の一部に臭いの強いものがありますが、なぜでしょうか?また、家庭でできる消臭方法は?
革の主成分であるコラーゲンタンパク質は無臭ですが、様々な工程を経ることで、種々の臭いが付着します。製革・加工工程における臭いの原因と考えられるものは以下となります。
原料皮 皮や付着物の腐敗、防腐剤
準備工程 脱毛剤、脱毛処理生成物
鞣し工程 鞣し剤(タンニン、タンニン浴中の腐敗生成物、アルデヒド類、合成鞣剤)、加脂剤(魚油、油の酸化生成物)、防腐剤、染色助剤
仕上げ工程 仕上げ剤、溶剤製品、接着剤、カビ、着用中の異物の付着や移臭

これらの原因物質は製品革に常に残るものではありませんが、扱いが不適切であったり、特殊な製革法を用いたりした場合には、臭気が残ることがあります。ただ、臭い成分の複合や個人差もあるため、臭いの原因を明らかにすることは困難になります。消臭剤や防臭剤などに明確な区別はありませんが、次の分類を参考に試してみてください。

消臭剤 酸化・還元・中和・縮合・付加反応のような化学反応や、微生物などの生物作用で、臭気物質を別の低臭気物質に変換して臭気を消すもの
脱臭剤 活性炭やシリカゲル、ゼオライトのような多孔性物質によって臭気物質を物理的に吸収・吸着及び分解などすることで取り除くもの
防臭剤 抗菌剤などの物質を添加して、臭気の発生や発散を防ぐもの
芳香剤 香料、植物精油のような芳香性の物質を添加して、マスキング、中和の効果を図るもの
革製品が色落ちして他の衣料などに移ることがありますが、なぜでしょうか?
色落ちの直接の要因には、革中の染料や顔料が他の繊維素材や革に移行するものと、染色革の細かい繊維粉末が付着するものとの2つのケースがあります。前者は他の繊維などでもみられる一般的な色落ちで、染料や顔料との結合が弱いために他繊維を汚染してしまうものです。また、後者はスエードやヌバックの起毛処理によって生じるバフ粉が残ってしまうものです。
染色に関しては年々改善されていますが、革の色落ちを防止するには、革製品を水や雨に濡らさないことが重要です。防止策として、着用前に市販の防撥水スプレーの使用をおススメします。乾燥の摩擦による色落ち防止策については今のところ良い方法がないため、購入時によく確認するようにしてください。
汗やクリーニングによる色落ちへの対策としては、アクリル、アセテート、ポリエステルなどを使用して皮革用染料に染まりにくくする方法もとれます。起毛革の色落ちについては、ブラッシングやクリーニング処理などによってバフ粉を除去できる場合もあります。
スエードやヌバックなどの起毛革と素上げ革やアニリン革など、仕上げの薄い革の手入れ方法と汚れの取り方について
これらの革は塗装仕上げ膜がないか、または膜が薄いため、最初に水や汚れから革を守るビフォーケアとして、市販の防水スプレーの使用をおススメします。しかし、水がかかったり、飲み物などの液状の汚れがついたりしたときは、それらが革の中にしみ込む前に、できるだけ素早くハンカチやティッシュで吸い取るようにしましょう。
また、日常の手入れとして、使用した後には乾拭きやブラッシングを十分に行っておきましょう。それでも落ない汚れには、消しゴムタイプのクリーナーを使ってください。ややきつい方法ですが、タオルを水に濡らしてから固く絞って拭き取ることも可能です。ただし、素上げやアニリン革には濡れるとシミができるものもあり、また、起毛革は濡らすと毛羽の美しさを損なう場合もありますので、注意が必要です。ベンジンやシンナーなどは油性の汚れをよく落としますが、シミなどができやすいので使用しないようにしてください。
爬虫類革についての本物かどうかの見分け方
日本袋物協会では、爬虫類革のバッグに対して、自主的な品質表示規定を定めています。それによると、外面積の60%を超える素材を使用する場合は、「ワニ」や「トカゲ」のように表示するようにしています。しかし、かばんやベルトでは、ワニやトカゲなどの革は「通常生活の用に供する」家庭用品ではなく贅沢品にあたり、また識別が難しいため、品質表示の対象から除かれています。したがって、素材名が表示されていたり、紛らわしい名前がついていたり、表示自体がされていなかったりします。
一般的に、爬虫類の模様を真似た革を作るには、型押しをすることになります。型押しは、牛革や豚革等を型板やロールで加圧し、動物の銀面模様の型をつけます。型押しであるかどうかは、外観からのみでは簡単に識別できない場合が多いため、次のポイントを参考にしてください。
  1. 模様が均一かどうか
    動物はそれぞれに個性があるため、模様が均一すぎる場合は型押しの可能性が高いです。
  2. 銀面模様の凹凸の様子を観察する
    革断面を顕微鏡で見ると、本物は凹凸が深く、本物でない場合は凹凸が浅いということがあります。
2は通常見分けることが困難ですので、1を目安にすると良いでしょう。
エナメル革のつやが消えてきたのはなぜでしょうか?

エナメル塗膜のつやが消える原因は、大きく二つに分けられます。一つは塗膜の表面の変化によるもので、もう一つは内部の変化です。表面の変化には、下記の要因が挙げられます。

  1. 太陽や蛍光灯などの光や熱による変化
  2. 使用過程での細かいシワや擦り傷の発生
  3. 手垢や汗など、生活汚染物質の付着
また、内部の変化は、本来革素材中に安定して存在するはずの動物油や下塗り塗料中の各種ワックス類が、エナメル塗膜中に少しずつ移行することによって起こります。この結果、エナメル塗膜に不純物が入り込んだ状態となり、光沢が低下していきます。防止対策としては、使用時の丁寧な扱いや、柔らかい紙や布での包装、シューキーパーによる型崩れの防止などがあり、これによって擦り傷やシワの発生はある程度防ぐことができます。また、手垢や汗などの生活汚染物質が付着した場合は、薄めた中性洗剤をつけた柔らかい布で拭き取ると良いでしょう。
人工皮革と本革を見分けるポイント

人工皮革にも非常に多くの種類があり、中には本革とほとんど見分けがつかないものもあります。明確に見分けるのは大変困難ですが、下記のようにいくつかの方法があります。

  1. ラベル、品質表示、レザーマークの有無など
  2. 品質のわかる切り口(ベルトのバックルをはずすなど)を探し、本革特有の断面構造かどうかをみる
  3. 縫い目の形状は、本革と人工皮革ではかなりの差があるので、身近にある本革製品と比べてみる
  4. 人工皮革は手のひらを当てていると汗ばむ傾向がありますが、本革にはしっとりとした感触があります。
  5. 本革には動物の生体時の傷やシワなどによる不規則性がありますが、人工皮革は全体として均一になっています。
  6. 本革は、表面を濡らしてすぐに拭き取ると、かすかなシミが一時的に残ることが多いです。(このシミは容易に直せます)
  7. 人工皮革は焼くと発泡したり溶解しながら燃えたりしますが、本革ははるかに燃えにくく変形しにくいです。
これらの方法を、一つだけではなく複合的に試してみると、よりはっきり区別することができます。
革が呼吸するとは、具体的にどういうことでしょうか?
革を構成するコラーゲン繊維は親水性であり、繊維同士が立体的に交絡した構造を持っています。このため微細な間隔が多く、この多孔性が靴の履き心地や衣料としての快適性など、革の特徴を発揮しています。
革は湿度(相対湿度)の変化に応じて容易に水分を吸収し、また放出します。このように、革が水分を吸収し放出する作用を“革は呼吸する”と言い、これが革の最大の特色といえます。人工皮革の靴と比較して、革靴の蒸れが少ないのもこのためです。
革製品が水に濡れて乾いた後や保管中に白い粉または白いカビ状のものが吹き出ていることがありますが、なぜでしょうか?また、どうすれば防止できるでしょうか?
白い粉またはカビ状のものを「スピュー」といいます。スピューの成分は塩または脂肪のいずれかで、水拭きで消えるのが塩スピュー、消えないのが脂肪スピューです。
塩スピューは靴に生じることが多く、雨に濡れてその水分が蒸発する時に革中に存在する塩が表面に運ばれ、乾燥して「塩吹き」と呼ばれる白い粉の発生につながります。革中に塩が存在するのは、製革工程や発汗によるものと考えられています。この塩スピューは、水に濡らして固く絞った布で拭けば簡単に取り除くことができますが、革中に塩が存在すると再び発生し、完全に防ぐことは困難になります。革に防水性を持たせて水の浸透を防いだり、浸透した水を早めに除去したり、内側に潮解しない乾燥剤や新聞紙を入れて陰干しするなどの工夫が必要です。
一方で、脂肪スピューは衣料革に発生するケースが多いようです。脱蝋不十分の天然油脂またはパラフィンなど高融点の合成樹脂を含有する加脂剤を使用した場合や、動物の体脂肪の除去が不十分で革に残留した場合に発生しやすくなります。対処法としては、ドライクリーニングによって脂肪成分を取り除いたり、低融点の油剤を添加したりすることによって軽減されることがあります。

お問い合わせ窓口

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連絡先団体名:兵庫県皮革産業協同組合連合会
所在地:670-0964 兵庫県姫路市豊沢町129 あさひビル4F
TEL:079-285-3872 FAX:079-285-3268
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