公益財団法人 姫路・西はりま地場産業センターがお届けする電子版『じばさんニュース 夢おこし』の「西播磨の地産地消・応援シリーズ」。今回は、豊かな海に恵まれた西播磨の冬の味覚を代表するカキを取り上げることにした。
西播磨では、西から赤穂市坂越、相生市、たつの市御津町、姫路市網干区、同市家島町などが産地として知られるが、その中でも昭和53年から本格的な養殖が始まり、兵庫県認証食品にも選ばれている「相生のカキ(相生牡蠣)」を紹介することに。
相生のカキは、波静かな相生湾内で種付けを行い、餌である植物プランクトンが豊富な蔓島(かづらしま)周辺の沖合で養殖。相生市の壺根港と鰯浜港に25の加工場があり、その日の朝水揚げしたカキの「むき身」作業を行い、阪神方面を中心に各地に出荷している。
そこでまずは相生漁業協同組合を訪ねて、相生牡蠣の歴史や特徴、組合として取り組む「おいしさへの情熱」などについてうかがい、さらに今年は1月20日(日)に開催される恒例の「相生かきまつり」の概要について相生観光協会に聞いてみた。
昭和53年から本格的に養殖を
相生牡蠣の養殖・生産に取り組む相生漁業協同組合は、昭和24年7月に89名の組合員で設立された。昭和50年ぐらいまでは底引きなどの網漁業が絶対多数を占め、アジ、サバ、イワシ、イカナゴ、エビ類が主力だったが、次第にそれらの漁獲量が減少したため、消費者ニーズや市場動向などを考えてカキの養殖への転換を模索。数人の有志がカキ養殖の先進地を視察見学するなどして、昭和53年から組合として本格的に取り組み始め、現在では正組合員41名、準組合員10名を擁し、その9割がカキの養殖に従事。壺根港と鰯浜港に25の加工場(経営体)を持つまでになっている。
相生牡蠣の1年は、5月ごろに波の静かな相生湾内の養殖いかだで、ロープに結わえて海中に沈めたホタテ貝の殻に種ガキ(幼生)を付着させる(採苗。種付けする)ことから始まる。そして一定の成長を待ち、お盆過ぎぐらいから播磨灘に浮かぶ蔓島あたりまで沖出しして本養殖を行う。
11月頃からがいよいよ収穫で、朝早くに養殖場(漁場)まで船を出し、成長して重くなったカキがびっしりと連なったロープをウインチで引き上げる。そしてカキを船に満載し、港まで取って返して陸揚げ。陸揚げされたカキはただちに洗い場で泥などを落とし、それぞれの加工場に運ばれる。
ここからが生産者の奥さんや地元のお母さんたちの出番で、「カキ打ち」と呼ばれるむき身加工≠ェ始まる。この時期になると必ずテレビや新聞で報道されるカキの産地の「冬の風物詩」でもある。
そのカキ打ち作業を、組合の牡蠣養殖生産協議会会長を務める石井宏明さん(宏栄水産)の加工場で見せてもらう。作業台の上に山と積まれたカキ。それをビニールの手袋をはめた「むきこ」さんと呼ばれる女性たちが、1つ1つ素早く取っていってはメスのような専用のナイフで殻に差し込み、あっという間に貝の口を開き、身だけをさっと容器に放り出す。その素早さは半端でなく、皆さん体でリズムを取りながら次から次とカキをむき身にしていく。たまに口を動かしても手だけは一時たりとも休まない。そんなプロの技に、ただただ感嘆するしかない。
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