1.兵庫県内きっての漁業の島「坊勢島」
姫路港から定期船で約30分。18km沖合に浮かぶ家島諸島の1つの島である「坊勢島」(姫路市家島町坊勢)。読みにくい名だが「ぼうぜしま」と呼ぶ。
地名の由来は、元慶7年(883)に比叡山西塔実相院の高僧覚円が配流された際、師を慕って彼の弟子数十人がこの島に渡り、住むようになったためと言われている。
人口約3000人、面積わずか1.87kuという小さな島だが、坊勢漁業協同組合(上村広一代表理事組合長)の所属船舶は930隻に及び、組合員数、水揚げ量、水揚げ金額とも兵庫県一、二を争う漁業の島である。正式な統計ではないが人口の約7割は漁業関係者と言われ、組合員の平均年令は49歳と若く、後継者である若年層が多いのも特徴の1つである。(いずれも平成23年現在)
船曳き網漁、底引き網漁、巻き網(巾着網)漁など漁法も多彩で、ワタリガニ、イカナゴ、アナゴ、サバ、アジ、サワラ、タイ、ハモ、スズキ、メイタガレイ、アカシタヒラメ、イカ、タコ、シャコ、コブトエビ、ナマコ、シラサエビなど多種多様な魚介類を水揚げし、牡蛎や海苔の養殖でも知られている。
なかでも有名なのが「坊勢カニ」の名前で知られるワタリガニ(ガザミ)だが、近年、注目が集まっているのが兵庫県認証食品にもなっている「ぼうぜ鯖」。これまで地元では余り流通せず、知名度もいま一つだったが、食通の間でその旨さが知られるようになり、じわじわっと人気が高まっている。
この「ぼうぜ鯖」の特徴は、「畜養」という方法を用いていることで、6月頃から7月頃にかけて瀬戸内海で漁獲した、まだ体長も小さく脂も乗っていない天然のサバを生け簀の中でエサを与えながら育て、生育を待って11月頃から翌年3月頃にかけて出荷している。
後ほど紹介する漁協直営の「とれとれ直売所」でも、水槽の中でサバが生きたまま泳いでおり、注文を受けてその場で生き〆して販売しており、「鮮度は抜群やし、脂がよくまわっていて、マグロのトロに負けんぐらい旨い。私らに言わせると、関サバなんかより断然上です」と上村組合長は胸を張る。
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