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vol.22 インタビュー 姫路城で花開く平成の菓子文化
vol.21 首長インタビュー 旧市町の特色を生かしながら市民が参画する市民主体のまちづくりを
vol.20 首長インタビュー 林業の再生を目指して『宍粟らしさ』が息づく街づくりへ
vol.21 2007年2月発行
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首長インタビュー
旧市町の特色を生かしながら
市民が参画する市民主体のまちづくりを
西田正則市長
西田正則市長
平成17年10月1日に、龍野市、新宮町、揖保川町、御津町の1市3町が合併し、人口8万3千人の新しいまちに生まれ変わった「たつの市」。それぞれの市町が長い歴史の中で培ってきた文化や伝統、清流揖保川と美しい瀬戸内海、深い山々の緑などの豊かな自然、さらには市域内に先端科学技術を集積する播磨科学公園都市を擁する「たつの市」が今後どのような夢おこし、まちづくりに取り組んでいくのか──たつの市の地場産業や観光振興についても触れていただきながら、西田正則市長にお話をうかがってみた。
──市長は「旧市町の個性を伸ばし、バランスよく調和させていく」ことを当面の課題に、「自然と歴史と先端科学技術が調和し 一人ひとりが輝くまち」を新しいたつの市の将来都市像に掲げられていますが、まずそのあたりから。
世界の梅公園
御津町の世界の梅公園
 たとえば御津町には世界の梅公園があり、梅まつりや賀茂神社の小五月まつりなど地域に根ざした従来からの伝統文化やイベントがある。新宮町には宮内遺跡や馬立古墳群があるし、揖保川町には永富家住宅があって、旧龍野市には脇坂藩の城下町としての古い町並みや聚遠亭なども残っている。さらに新しいところでは新宮町の播磨科学公園都市に大型放射光施設のSPringー8や、ガンなどを治療する粒子線医療センターがある。そういったそれぞれの地域の長い歴史や文化、自然環境、先端科学技術などの特色・特徴を生かしたまちづくりを行っていくということです。

──その中で行政の役割とは?
 
龍野特産の紫黒米
龍野特産の紫黒米
        
紫黒米を使った清酒と健康酢
紫黒米を使った清酒と健康酢
      
むらさきの舞
紫黒米そうめん
「むらさきの舞」
 もう行政が何もかもやる時代じゃないと思うんですよ。市民一人ひとりが主体的に参画し、自分たちの生活の中から自分たちで工夫して考えて行動していく──それがこれからのまちづくりの基本だと思っています。
  ですから職員にも、じっと市役所にいてても駄目だ。外に出て、市民と話をしろ。市民の生活の中から出てくる生の声の中に施策のヒントとなる宝が眠っているんだとハッパをかけています。
  昔みたいな経済が右肩上がりの高度成長で、財政的に恵まれた時代であれば、国や県からの補助金を当てにして、特に考えず、まるでレストランでメニューを選ぶみたいに、じゃあこれとこれを選択しようで済んだけれども、今は違う。予算もないし、三位一体改革で地方交付税も削減される。自分たちで一人立ちしていかねばならない。かといって行政だけでは何もできない。市民の力を借りなければ駄目である。そのあたりの意識改革、「考え方の改革」が行政や職員に求められているんです。
  たとえば、市の新しい特産品として人気を呼んでいる紫黒米もそう。今の農家は不況で一人立ちできないという状況であり、このような中でほ場整備、補助金を出す、などといった従来型の施策では意味がない。そこで、農家が本当に喜ぶことを考えろと担当者に命じたんです。
  そして、担当者が農業試験場などを走り回って持ってきたのが真っ黒な米。何というものかと聞くと、紫黒米という古代米の一種で、ビタミンとミネラルが豊富であり、色が他に例のない紫色であることから、商店街で煎餅にしてもらったらどうかと言う。じゃあ、どこかで実験的に栽培してもらおうと話をしていると、某酒造メーカーが話を聞きつけてすぐにやってきた。紫黒米はポリフェノールの一種であるアントシアニンという赤い色素を含んでいるから、それでワインを作りたいという。そこで市が農家に頼んで作ってもらったのが紫黒米「むらさきの舞」で、それを使ってできたのが「赤い玄米ワイン 夕やけロマン」。紫黒米の商品化の第一弾で、すごい勢いで売れた。
  これが平成13年のことで、その後もいろんな企業や店、グループが紫黒米を使ったそうめん、味噌、寿司、清酒、洋菓子や和菓子、健康酢などを作り始めた。農家にしても普通の米よりも高く売れるから、作らせて欲しいという人が増え続け、多少なりとも「儲かる農業」に貢献できたと思っています。

──行政は紫黒米という仕掛けというか道を付けただけで……。
 
皮革フェア
皮革フェア


ファッションショー
レザーファッションショー
 そう、後はどんどん市民の方でやってもらえた。
  これは醤油、そうめんと並ぶ市の地場産業の1つ、皮革にも言えます。ご承知のように皮革は安い外国製品に押されて不振で、市では県と協力して毎年「ひょうご皮革総合フェア・たつの市皮革まつり」を開いているんですが、昨年なんかは雨天にも関わらず1万8千人もの来場者があった。
  最初はもっとこじんまりしたイベントであったが、単に皮革の見本市だけでなく、革を使って何かものを作ることを考えろと指示して革細工の体験コーナーを始めた。で、いろんなグループや子どもたちが革を使ってキーホルダーや可愛い小物を作るようになった。
  するとそのうち、龍野実業高校デザイン科の生徒たちが加わってレザーファッションショーをやるようになった。地場の天然皮革を使ってデザインし、製作したスカートや靴などをまとってファッションショーをするんですが、これが好評で、昨年は西脇高校の生徒による播州織の浴衣のファッションショーや相生産業高校の着物ショーも行った。
  その上、会場の外では御津町の魚介類や揖保川町の野菜などの地元産品を売るテントも並び、大勢の人が集まって来られて喜んでもらえた。
  行政はお手伝いするだけで、住民の方が積極的に参加し、イベントを盛り上げてくれる。自然発生的に広がっていくんですよ。

──それにしても、仕掛けづくりがお上手だという気がしますが。
 
行政の役割を説く西田市長
行政の役割を説く西田市長
    
オータムフェスティバル
オータムフェスティバル
 特定の人や団体だけでなく、いろんな人が集まりやすい仕掛けを作り、集まってきた人たちが中心になってやっていくということが大切です。
  皮革まつりだけじゃなく、秋の「市民まつり」や「オータムフェスティバル in 龍野」「町ぢゅう美術館」にしても基本はみんな同じ。多くの人に参加してもらえるよう人寄せの工夫をして、行政は前に出ず、地域の人に主体的に参加してもらえるようなことをしないと……。市民まつりにしろ何にしろ・何をやっても活力さえ出れば良い・という感じで、開催を重ねるごとに中身もどんどん変わっていっているが、それで良いんです。逆に同じようなことをやり続けるだけなら止めてくれと職員には言っています。
  いくら立派な建物があっても、そこを市民が活用していかなければ無用の長物。市民が主体の、市民によるまちづくりをやっていかないと。従来型の上から下に下ろす施策じゃなく、下から自然に盛り上がっていくような、市民の工夫が生かされ、生きがいを持ってもらえる施策に取り組んでいかなければならないと思います。そのためには行政の考え方を180度転換する必要がある。

──市長のまちづくりに対するお考えはよく分かりましたが、旧市町の個性を生かしながらも、新しいたつの市としての一体感を醸成するためにはハード面の整備も必要だと思うのですが。
 
コミュニティバス
コミュニティバス
 仰るとおりで、今進めている一番大きな事業が市域の南北をつなぐ揖龍南北幹線道路の整備。北は宍粟市、新宮町から南は揖保川町、御津町へと、途中で山陽自動車道龍野インターや国道2号太子龍野バイパス、国道250号などの東西幹線道路軸と結びながら市域を縦断する南北道路で、県と協力しながら橋梁工事などを進めています。これまでの道路軸は東西に偏っていたので、南北に長いという新たつの市の地勢を考えても、各地域の交流や一体感の醸成を図る上で極めて大切な事業だと思っています。
  もう一つ、市の南北27キロを結ぶ南北連結コミュニティバスの運行も昨年から行っています。4つの地域ですでに運行しているコミュニティバスを縦に連結するもので、これにより新宮の人が御津の梅を見に行ったり、逆に御津の人が龍野の文化財を見に行ったりと、相互の地域交流も生まれてきています。

──合併によって、たつの市には4つの地域の歴史や文化に加え、山、海、川といった豊かな自然を持つようになり、これらの観光資源をネットワークすれば、観光のまちとしての魅力もますます深まると思います。今、御津町の室津で「海が見える道の駅」構想も進んでいると聞きますが。
 
室津の漁港
いかなご漁でにぎわう
室津の漁港
 検討委員会を作って議論しているところですが、従来型の道の駅とは異なり、地場の魚介類や野菜を使ったレストランや物産販売所で地産地消を図るだけでなく、そこで釣りやマリンスポーツを楽しんだり、船を出して漁業体験ができるなど、体験型の観光施設になればと思っています。

──観光で言えば、たつの市には赤とんぼ荘、志んぐ荘、新舞子荘と国民宿舎が3つもあります。レジャーの多様化などで、どこの国民宿舎とも利用客が減っていると聞きますが、そのあたりは。
 
志んぐ荘
志んぐ荘

 それぞれの国民宿舎の支配人に3年間の猶予を与えて、経営の改善を命じています。おかげで、たとえば志んぐ荘では民間の割烹旅館とタイアップして、鮎狩りのシーズンに屋形船を浮かべ、宿泊とセットにしたプランを打ち出すなど、それぞれが工夫を凝らしてやってくれています。3つの国民宿舎が互いに競争し合う。これも合併の効果と言えるかも知れません。

──話は地場産業に戻りますが、あるメーカーが醤油の旨味、風味を引き出す高品質の播州産小麦の復活を図っているという新聞記事が出ていました。地場産業が周辺の農業や漁業をも活性化させていくという良い例になりそうだと思いますが。
 
聚遠亭
旧龍野藩主ゆかりの聚遠亭
 小麦だけじゃなく、同じく醤油に使う大豆にも言えるかも知れない。近年はアメリカの遺伝子組み替え大豆の問題もあって、国産大豆への期待が高まっている。このあたりももっと地元で考えねばならない課題だと考えています。
  合併によって市内の醤油メーカーさんも数が増えたし、お互いに競争しあったり、助け合ったりしていっていただければと期待しています。

──確かに合併によって、皮革、そうめん、醤油といった旧龍野市の地場産業だけでなく、揖保川町のトマトや紅花、御津町の魚介類や大根、にんじん、新宮町の黒大豆枝豆など、素材や資源が増えましたし、将来が楽しみですね。

   
 そうですね。それらの素材や資源の活用を高めるために、まずはそれぞれの地域で独自の工夫をして盛り上げて欲しい。今まではせっかくある豊かな資源、宝が眠っていたような気がします。住民の参画で一工夫していけば、そうした宝が本当の宝になるんじゃないでしょうか。
  いずれにせよ、これからはソフトの時代です。「人」と人の「心」を中心に据えたまちづくりをやっていきたい。ただし、そこで大事なのは歴史や文化。そのときそのときが良ければいいというのでなく、大きな夢を抱いたまちづくりでなければ永続性がない。それぞれの地域が培ってきた歴史や文化を重視したまちづくりをやっていきたいと思っています。

 
──期待しています。本日は長時間、ありがとうございました。


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